Memo

#糖琉 #琉椛

予感がする。

糖衣はその日、一人で乙女ゲームをしていた。兄さまは仕事で昼から出かけている。今日は遅くなると言っていた。気付けば、日は落ち、部屋の中をオレンジ色に染めていた。集中していて、凝り固まった身体を伸ばしてほぐす。
部屋を出ると、珍しく寮の中がシーンとしていた。兄さまと同じで、皆出払っているのか。いつも騒がしい寮に思いを馳せて寂しく思う。
階下から微かにテレビの音が聞こえる。そう言えば、主任も今日は休みで、あく太くんから借りた映画を何本か観るんだとお昼ご飯の時に言っていたのを思い出す。まだ全部観ていないなら、一緒に夜ご飯を食べて、甘いコーヒーでも用意して一緒に観られたらいいな。そんな事を思いながら、静かに階段を降りて、リビングに向かう。
突然テレビの音が消えた。足音が響く。主任のものではない気がする。寮の皆であっても何の問題もないはずなのに、何故か緊張してリビングのドアのドアノブに触れる手が慎重になる。開けてはいけないと言われているような。
そっとドアノブを下げて、ドアを開ける。
「ったく⋯⋯」
リビングから聞こえるはずがない大好きな声が聞こえて、手が止まった。隙間からソファで寝ている主任さんにブランケットをかけている仕事でいないはずの兄さまがいた。兄さまが主任さんの顔をじっと見つめる。
「しょうがねぇ奴⋯⋯」
(あ⋯⋯)
脳裏によぎる過去の記憶。このHAMA寮に入寮してすぐの事。配られた可愛らしいプロフィール帳の「好きな人のタイプ」欄。僕は兄さまの事を思い浮かべながら書いた。兄さまもきっと僕の事を書いてくれているだろうと、くだらないと言って、とっくに書き終わっていた兄さまのプロフィール帳を見せてもらう。「少し抜けてるヤツ」兄さまのものにはそう書いてあった。(僕じゃない⋯⋯)目の前が真っ暗になった。
気付けば僕は、部屋に戻っていてベッドの上にいた。先程の光景が、兄さまの僕に向けるものとは違う優しい声が頭から離れない。兄さまは僕の事を愛している。それは嫌というほど身にしみている。でも何故だろう。予感がする。そして、その予感は冷たい水のように僕の身体を満たし始める。