Memo

#生椛
(しかし、可不可の警告も虚しく、1年経った頃には、俺は可不可が彼女を好きな理由を身に沁みて分かってしまっていた。彼女は太陽のように周りを平等に照らす。もちろん、あいつにも⋯⋯)
(他人がほしいものを全て持っているくせに、自分には何もないという顔をする男だった。「また駄目だった」と言いながら、眉を下げて、俺が持てる愛はこれしかないんだ、とでも言うように俺の服の裾を掴む。そしてこの手を離すために、他人を巻き込み生き急ぐ。腹が立つ男だった。目に隈をこさえながら働く日々は、あいつが最後に打ち上げる花火のためにせっせと火薬を詰め込んでいるようだった。空に浮かぶ大輪の花よりも、手元でパチパチと揺らめく微かな光を見たいのに。そして、出来上がった花火にあいつが水をぶっかけるのだ。いつもそうして終わった。そして俺はまた新しい花火のために火薬を詰め込む。その繰り返し。)
(ある日の夜、2人が揃って寮に帰ってきた。スーツ姿のあいつにドレス姿の彼女。風呂上がり、つい、どこ行ってたんだとあいつに聞いてしまった。UMA研究会の食事会に行ってきたんだと楽しそうにその時起こった出来事を、惜しげもなくあいつは語って聞かせた。(俺だったら、二人だけの秘密にするのに)その時明確に悔しいと思った。しかし、「生行も今度一緒に行くか?」そう笑顔で言うあいつを見て、安心してしまった。またそれが悔しくて、俺は唇を一瞬噛み締めた後、何でも無い風を装いながら、素気なくあしらった。)